石のアンプと球のアンプ

半導体と真空管のアンプの比較は、オーディオやPA装置に興味がある人たちのお気に入りのお題ですが、それらを作る側からみるとどう見えるか考察してみました。

エンジニアリングの側面で見ると計測可能なもの(性質)が最も先立ち、感覚頼り(官能性評価)などは最後の仕上げ(評価)で効いてくるところと思います。別な言い方をすれば、まっとうな製品として仕上げるなら計測可能な物理特性で最低限のレベルを超えてもいないものはお話にならないということになります。

それを踏まえて考えますと、そのそれぞれの得意とするところを能動素子として半導体を使った回路と真空管を使った回路とで前提はあいまいなまま比較してみましょう。

半導体 真空管
雑音 ×
歪み ×
温度特性 ×
周波数振幅特性 ×
動作時の機械的特性 ×
電力効率 ×
出力インピーダンス ×
電気的な頑丈さ ×
機械的な頑丈さ ×
重さ ×
小ささ ×
回路の簡単さ ×

このような感じになるんじゃないでしょうか。

最後の「回路の簡単さ」については、半導体素子による回路が途中項目の「歪み」や「温度特性」の悪さをカバーするために複雑になるし保護回路が無いと結構頻繁に壊れるなどもあって結局メインの機能素子の周りにそれをまともに動かすための回路が膨大に付随してしまう結果、真空管で同様なレベルの回路を作った(作れる範囲の話だったとして)場合に比較して、複雑怪奇な回路になるということです。

真空管でササッと作れる範囲のもので、他の要求から真空管を選択できないとかじゃない限りは、おそらく真空管で作ったほうが簡単な回路になる。

もっとも今ならオペアンプのICを使えば、それで済む範囲の回路ならずっと簡単。

あと、真空管回路の場合、電源に要求されることとして電流変動はそんなに過激じゃないですが、低電圧動作の半導体回路の場合瞬間の電流の変動が激しくなるはずで、電源回路の設計も難しくなりますし、電源ラインの設計もあんまり脳天気な仕事じゃすまないことになりそう。

ということで、趣味で音響装置をいじるなら感電くらいが欠点で他多くの場合は真空管の方が半導体よりお気楽ということになりますね。

ここから追加

球アンプは定期メンテが必要(真空管が日和るので--出力管で2千時間とかが多いか?電圧増幅管は1万時間とか超えるし、2万時間保証の球もありますが)だし、上にもあるように石アンプは保護回路やら安定動作させるための回路が必須なために特性も長期に渡り安定していることが期待できます(経時変化で全体の性能が大きく変わらないことを期待できる)。

このようなことがあるため、コンシューマ向けオーディオ商品として商売を考えると、石アンプに軍配が上がると思います。

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