Carot One ERNESTOLO EX を使ってみる

イタリア製のちっこいプリメインアンプ、Carot One ERNESTOLO EX を使ってみています。

メインのオーディオシステムはほぼ自作品でかたまっていますが、世間の今時の既製品というのも知りたくなったので、サブのシステム構築がてら既製品のエントリーモデルで組んでみようかと。当初、日本のメーカーの製品を考えていましたが、何かこう食指が動かない。そんなところで結構評判が良く、以前から気になっていたイタリアの Carot One の新モデル(?) ERNESTOLO EX が面白そうで入手しました。

以前の EXCLUSIVE EDITION との違いは、初段が現行 6922 から JJ の現行 ECC802S に変更になり、オペアンプも変更になっているとか言う話です。

届いて早速メインのシステムのアンプと入れ替えて試してみました。

結論から言えば、概ね買って損はなさそう長時間試してみましたが、残念ながら人に薦められないと言わざる得ません。(2014/9/26追加)

断言しないのは、ちょっと JJ の ECC80×S の品質に個人的に若干疑問を感じる経験があるのと、この Carot One の ECC802S にも怪しいところがあって、ここからちょっと時間をかけて確認するところだからです。

そこを除けば、値段で八倍かかっているメインシステムのアンプと比べたら、値段を考えねば Carot One が完敗ですが、コストパフォーマンス勝負なら十分太刀打ちできている。

件の ECC802S は、完調なら値段考えると現行管中出色のできと言える気はします。手元にある東芝の 12AU7 や 5963、三つ松葉マークの松下 12AU7 と比較すると、さすがに細部において劣るところがありますが、値段の差を考えると JJ の ECC802S で、もう十分と言える。

Carot One で比べると、松下 12AU7 は若干下が膨らむというかドスの効いた感じになります。全体に渋目の鳴り方。

東芝管だと低域が締まった感じです。十分に出ていますが、締まった感じが人によっては不満に感じるかも。全体に滑らかというか、スッピンの美人さんという感じ?(笑)

JJ 管だと全体に何か響きが載るというか。他と比べずに聴いていると十分なんですが、東芝管などと比べると丁度日本製工業製品と昔のイタリア製工業製品の違いのようなものを感じなくもない。すなわちデザインは好いんだけど、筐体の仕上げにバリが残っていたりするのに似て、音が若干バリがあるような感じと言いますか。

書いていて気になったので、最終兵器的 NOS SIEMENS ECC82 を試してみました。JJ の ECC802S に近いですが、バリが(相反した表現ですが)落ち着いたきらびやかさと言った感じになります。個人的には最も好ましい、しかし、SIEMENS を常用としておごるのはいかにももったいない・・・う~ん、NOS SIEMENS の ECC82 が付いてたら、もう2万高くてもペイするというか、買わないと勿体無いとうか、そのレベルになっている気がします。

そういえば昔、唯の Carot One でも球をどこだか(Mullard?)の NOS 管に変えた特別限定版ってのを出していたような記憶が無きにしも非ず・・・

右チャンネルのみに妙なノイズが乗る(不定期にブツブツガサゴソ)状態だったので、最初は過去に JJ の ECC802S や ECC82、NOS の ECC82, ECC83 でも経験している真空管特有のノイズの症状とも似ていたので、それも疑っておりました。半田不良等の接触不良でも同様のノイズが出るのでそれも疑っておりました。

真空管は他のものと換えても上記ノイズは改善せず、それ以上の探求はメンテサービスを受けられなくなりそうだったので、販売代理店のメンテサービスに連絡してとっとと送りつけてしまいました。結論から言うと ECC802S の固定バイアス値調整のポテンショメータ由来の雑音ということでした。

結局、交換になりました。交換後のものでは今のところノイズは出ていません。

それは良いのですが、そのポテンショメータ由来の雑音が出て一定数は不良になる(規定以上のノイズレベル出力されることがある)可能性を把握していたようなので、そのバイアス調整の際についでにノイズのチェックもすれば良さそうなもんなんですがねぇ。まじめにバイアス調整するなら一定時間電源入れっぱなしにするはずなんですし。

まあどうでも良い話ですが。

<追記>

上では「ECC802S の固定バイアス値調整のポテンショメータ由来の雑音」と書きましたが、いろいろ考えてみるとECC802S のバイアス調整用のポテンショメータとは限らないと気が付きました。

ECC802S 由来のいわゆる真空管のサーノイズ(サーって言う音)は、ボリューム連動でボリュームを開ければ大きくなり、絞れば小さくなってます。ということは、普通の構成ならボリュームの前に真空管回路が入っていることになります。

# 普通じゃない構成だとボリュームがオーバーオール負帰還量のコントローラでボリュームはアッテネータではなくゲイン量のコントローラになっている場合ですが、これだとボリュームを絞りきれるか・・・ということになる。

ところで問題のノイズはボリュームに連動していませんでした。ということはノイズの発生場所は、順当に行けばボリュームより後ろになります。

となりますと、販売代理店メンテナンスサービスの言い分をそのまま素直に受けるとしたら、全体でのボリュームより後ろの半導体回路のバイアス値調整用のポテンショメータが問題を起こしていたとなります。

多層基板っぽいので、どれほど分かるかはわかりませんが、基板を観察すればもっと正確なことが分かるかもしれませんね。今のところやるつもりはありませんけれど。

製品自体は、現状は良いとは思いますが、こういうポテンショメータなどを使っている場合の長期的な状態変化はいかがなものか?というのはあり、まあ長期使用してみないと評価は下せそうにありません。とはいえ、ケミコンなどの寿命と比べてどうなのかという話もありそうですが。

<追々記> 2014/9/1 追加

Vitali 作曲の Chaconne をO. Respighi がヴァイオリンとパイプオルガン用に書き直した版で、ヴァイオリンが Jascha Heifetz、オルガンがRichard Ellsasser という面子のレコードがあるので聴いてみました。

やはり 8Ω 6W クラスのアンプの限界なのか、それとも物量の限界なのか、史上唯一人ヴァイオリン一丁でオケに対抗できたと謂われる Heifetz のヴァイオリンの大迫力が前面に出てしまって、本来ヴァイオリンを圧倒するはずのオルガンが添え物にしか聴こえません。(笑)

まあレコードの企画自体が Heifetz にあるのである意味その聴こえ方で正しいのかも知れませんが、メインの 8Ω 24W は出る真空管アンプではヴァイオリンと同音域でマスクされがちなオルガンの音もしっかり聴き取れ曲の構成が分かり、作曲の意図も汲み取れる再生がされるので、やはり物量の限界でしょうか。

といったところで、付属の JJ ECC802S から手持ちの SIEMENS ECC82 に挿し換えてみました。

JJ ECC802S は低域が若干足りない感じはしますがキッチリ締まった感じで鳴ります。SIEMENS ECC82 に換えると低域が若干膨らんだように感じられますが表現を変えれば豊かな低音とも言えるでしょう。そして丁度ヴァイオリンの音域あたりでは、JJ は若干荒さがあるか?という程度かと思っていましたが、今回聴き比べすると圧倒的に SIEMENS の方が解像度が高く思えました。

SIEMENS ECC82 に換えたら、かなりオルガンの音が分離されて聴こえてきました。

このレコードの録音は、Hollywood の Pomona College にある Bridges Hall ということですが、このホールは席数 600 ほどの小ホールです。小ホールとはいえ、とりあえずホールなので小編成ならオケが乗るようです。あと、パイプオルガンはしっかりしてます。

で、JJ ECC802S の Carot One だと小ホールがどこかの小さい録音スタジオに聴こえてしまう。SIEMENS ECC82 だとかなり小さい小ホールくらいに聴こえる。メインの真空管アンプだと小ホールでセット録音している様が分かる感じです。

<さらに追記>  2014/9/25

どうもラテン系の鷹揚さが無い人には薦められない気がしてきました。

あと、高能率のスピーカーを使用している人にも薦められませんし、8Ωを含む高(?)インピーダンススピーカーを使用している人にも薦められない。

ボリュームを絞っての使用が主になるなら薦められない気がします。やっぱり若干ノイズが乗るのです。そのため高能率のスピーカーを使用していると、どうしてもノイズが気になるレベルになります。

そのため、そんなのは気にしない鷹揚さを持ち合わせている人は大丈夫です。

低能率スピーカーを使用していてボリュームを開けて使う方は、このノイズがボリューム位置によらず一定なので音楽信号との相対差で気にならなくなる。

あと6Ωなどの低インピーダンススピーカーの方が低音域の質が高くなるように思えます。これは多分電源電圧との絡みでしょう。

<さらにさらに追加>

上に追加しておきましがた、人には薦めないものにしました。

このノイズは如何ともし難く、多くの人には耐え難いものと思えたからです。

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Carot One ERNESTOLO EX を使ってみる への2件のフィードバック

  1. miracle96dn のコメント:

    ブログ興味深く拝読致しました。愚生も初代Carot One Fabrizioloユーザーです。

    右Chノイズ確かにありますね。購入後すぐに気になり、ユキムに問い合わせたところ、
    回路設計上不可避とのお返事を頂きました。ネットで検索してもこの問題に触れて
    いる方が見当たらず、「実は個体差なのでは?」と疑心暗鬼になっておりました。
    EXになっても根本的な問題は解決していないことがわかり、(おかしな話ですが)
    安心しました(笑)

    当方もクラシックを主に聴いております。ポピュラー音楽だと、ノイズが楽音にマスク
    され気づかれにくいのかもと思ったりしましたが、それにしてもあれが気にならない
    方が(もしおられるのなら)うらやましく思います。

    • 近江屋 のコメント:

      私のと併せて3台は同じ症状のものがあり、「回路設計上不可避」というテンプレ的回答を得ているところかしてもっとあるということでしょうね。

      ネットで検索してこの問題に行き当たらないとのことですが、価格.com やその系統のサイトでユーザレヴューなどを漁って歩くと、結構同様の指摘があったように記憶しております。

      この手のレビューで「同じ症状」の指摘が複数上がるような場合、設計上の不具合であることが多いように思えます。Carot に関しては代が進んでも改善されずというところがなんとも・・・メインアンプのD級アンプについても、同様コンセプトの国産品の方が基本性能が上なものが多く、現状 Carot の優位性は外装デザインしかなくなっている気がします。それ含め良くも悪くもイタリア製ってところ?

      私のところでは、結局最初のものと交換で次にきたもの両方同じ症状が出たので、よほど運が悪いのでなければこの不具合は結構な確率で出ているものと推計されます。設計上不可避に品質に影響する部分なら、通常部品品質を上げるなど対策を打っておくものですが、これにも失敗している雰囲気があります。

      裏を勘ぐればいろいろ面白いストーリーを考えられるので、そのあたりで楽しんで元をとったつもりになって済ましていますが、いずれ腑分けはして技術的な問題点を明確にして自らの糧にはするつもり。なんらかのアンチパターンは抽出できるのではないかと考えている次第。

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