管式 MC ヘッドアンプを試してみた

普段のレコード再生には管式(真空管)のフォノイコライザアンプを使っています。カートリッジは Audio-Technica の MC 型のものを使っています。MC レベルから MM レベルへの増幅はフォノイコ内蔵のトランスです(した)。

で、この MC から MM への増幅を管式のアンプでやってみたくなったので、ちょっとやってみたわけです。

球は低雑音が売りの 6DJ8 (ECC88)で、さらに低雑音では評判の良いという話の松下のものを使ってみました(試作では PhilipsECG の 6922 (6DJ8 のヒーター電圧違い)を使用してて、これでも十分な低雑音でしたが)。

結論から言えば、趣味で納得して使う分には十分な低雑音にはなりましたが、一般に供するには納得しない人がいるだろうなぁというレベルでした。

アナログレコード時代終焉の頃(CD もアナログレコードも併売されていたような時代)のデジタル録音のレコードの最弱音とか、曲間の無音部分とかとかを除けば、レコーディングもアナログのテープですし、マスターテープももちろんアナログなわけで、そこにはアナログテープのヒスノイズが入っているわけで、それは案外大きい雑音です。そして上記試作したヘッドアンプの内部雑音とそのヒスノイズとを比較すると、ヒスノイズの方が大きく聴こえます。

ヘッドアンプでこれより低雑音でなければ許せないとするなら、アナログ録音時代の録音のものを聴くのは矛盾した話になるわけです。確かに雑音が重積されるので若干全体のノイズレベルは上がるのですが、そんなものはたまに入るゴミによるパチパチという雑音を気にしない大らかな神経であれば気にするほどの差異ではありません。

また、黄昏時期のレコードでも CD に張り合ってダイナミックレンジを取ろうとした結果でしょうけれど、全体の音圧レベルが高くなっているためクラシックもので弱音が続くとかいうものでもない限り、レコード再生としては S/N 比は向上している傾向が出ますから、ポピュラーとかジャズ、ロックのソースなら全然問題になりません。

とはいえ、半導体でヘッドアンプを作るのに比べ圧倒的に雑音は出るので、現代的基準からすると一般には供せませんという結論。

ちなみに一段増幅回路でやりましたが、6DJ8 の増幅率からすると若干オーバー気味です。なので NFB 掛けてゲイン調整したものと無帰還のもの二つ試作してみました。

ホンの僅かな帰還量ですが NFB を掛ける方が作りやすいです。無帰還は、電源品位をむちゃくちゃ要求します。そもそも MM  カートリッジ出力レベルに合わせて出力するので、出力レベルも mV 程度の信号になるわけですから電源が  10μV 単位で揺れていても出力に気になるレベルで出てきます。これが無帰還ですとほぼ回路の負荷抵抗との分圧レベルで出て来てしまうので、案外電源が重要になります。

しかも電源の問題点としては、100Hz とか 120 Hz とかの一般で気にするハムの周波数ではなくて、10Hz 以下の超低周波が案外出て来てしまいます。なので、安定化するかそこまでしないまでも、20Hz あたりで 10μV 未満の揺れに抑える必要があります。

もっと下になってしまえば、今度はアンプ(フォノイコやプリやパワー)が増幅しなくなるので問題になりませんが、後段のアンプ群が増幅するような低周波範囲では揺れない必要があります。

当初無帰還の試作品を使ったところ、モーターボーディング様の動作を示したため、こりゃどうしたことか?と悩んだのですが何のことは無い、電源がそのように揺れていたからでした。

この当初品は、20Hz までフラットにしたため、カットオフ周波数は 20Hz より下になってました。また後段のフォノイコにはサブソニックフィルターなど入れてなかったこともあって、電源の揺れがそのままスピーカーにまで増幅されて、件の現象が出ました。

なので、カットオフをもうすこし上げて、かつ電源品位も向上させたところ、この現象も収まりました。

対して NFB を掛けた方は、以前の電源でも問題生じませんでした。これは 8dB 程度ですが帰還している関係で、電源の揺れもその分低減して出力に出る関係です。

ということは、無帰還アンプと振幅レベルで 8dB くらいは差があるはずなのですが、音に出して聴いてみると若干無帰還の方が音がでかいかな?くらいにしか聴こえないのが不思議。

さらには、プリアンプ段まで含めて考えた場合、無帰還ヘッドアンプの方が信号出力が大きいために結果として同じ音量に調節するとプリアンプでレベルを下げることになります。結果としてフォノイコライザ段までの雑音も、その下げたレベル分だけ無帰還の方が下がりますから、S/N 比は無帰還の方が良くなってしまうという(笑)。

ヘッドアンプだけで見ればこの場合の S/N 比は無帰還でも NFB 掛けた場合でも同じになります。ただし、フォノイコライザに入る信号レベルは無帰還の方が大きいので、フォノイコライザの出力で比較した場合は、無帰還の方が S/N 比は良くなるわけです。

複数段構成のアンプシステムの場合は、各段の残留雑音がほとんど同じなら前の方の段でゲインを稼いでしまった方がトータルの雑音は減ります。

二段構成で考えてもらえば分かるでしょうけれど、初段 26dB、次段 14dB でトータル 40dB のアンプと、初段 20dB、次段も 20dB のアンプとはトータルでは同じ 40dB のアンプになりますが、初段が同じ 1mV の雑音を出力していたとしたら、前者は後段出力で 5mV、後者は同様 10mV になります。実際は後段の雑音も重積されますが、これも同じレベルとするならどう見ても前者の方が低雑音です。なのでトータルで同じゲインにするなら、早いうちにゲインを稼いだ方が良いことになります。

外来の雑音を考えても、早いうちに大きく増幅してしまっておいた方が扱いが楽(S/N 比を良くできる)ですから、無理のない範囲で前段を高ゲインな構成にした方が有利です。

と考えると、高々 20dB 程度しかゲインが無い MC ヘッドアンプは、宜しくない存在となります。よって次に続く

で音質的には、無帰還の方はパリッとした感じで、なんとなく大型の機械式蓄音機の音を連想させるものがあります。いわゆる生々しい感じの音です。NFB 掛けた方は艶がのるというか、響きが煌びやかというかで、いわゆるホールトーンを意識させるような音になるので、オケなどのクラシック向けでしょうか?無帰還は、ジャズとかが良い感じで、目の前で演奏している感じがしますね。クラシックも無伴奏のソロとか小編成の室内楽とか案外良いです。

ちょっと雑音まわりの話を省略しすぎて分かりづらかったので直しました。ついでに次へのつなぎも追加。

カテゴリー: オーディオ, 趣味 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください